音楽
担当:石橋
■活動の様子
今回のTさんは、最初からスムーズに電気ピアノの前に進み、椅子の背を右向きにするか左向きにするかで迷ったけれど、座るとすぐに音を出してくれました。
今までは私が歌い出すと、その曲に合う和音をTさんが探し出して鳴らす場合が多かったのですが、今回はTさんの音を先行で始まりました。
Tさんの出している音が、Fの和音に近かったので、F のキィのサッチモのバラードを弾いてみました。Tさんも知っている曲で、A メロを歌っている時は私のピアノの音とTさんの電気ピアノの音が時々重なって綺麗に聞こえてきました。
ただ今回は、サビの所で私のコードが変わっても、Tさんは自分から音を変えようとはしませんでした。前は、サビの展開で私のコードが変わると、手を動かして音を合わそうと探している様子だったのに、今回はだいたいFの和音が出ていれば所々綺麗に重なるので、満足したのかもしれません。でも、もしかしたら最初から音が合っていたので、サビの後、メロディーがまた頭に戻ることを知っていて、ずっとそのまま押さえていたということもありそうです。
ここでお母様が電気ピアノの譜面台の上にミニピアノを乗せると、Tさんは最初から積極的に弾こうとしていました。ただ、おそらく意図せずに左腕で押してしまった電気ピアノの音は、Tさんも嫌がった様子で、すぐにお母様が電源を切って下さいました。
今回は重心を椅子に固定していなかったので、目の下にある電気ピアノの鍵盤よりも、目の前にあるミニピアノの鍵盤の方が見やすくて弾きやすかったのかもしれません。ミニピアノの音も、気に入った様子でした。
さて実はこの様子を、今回お母様が撮って下さった写真を見て驚きました。
今までは曲げた手の親指か人差し指の関節を使って、出来るだけ音をたくさん出さない様にして弾いていた様子でしたが、今回はなんと右手の人差し指と中指の腹で、目の前の鍵盤を器用にひとつずつ押さえられるということが初めて確認できたのです。
右腕の肘を高く上げて手の平は横向きに保ちつつ、中指で「ファのシャープ」、そして人差し指で「ソ」。これはTさんだけの指使いかもしれませんが、おそらく本人は鍵盤一つに指一つを意識していたのではないかと思いました。
実はその時は、Tさんがこんな弾き方をしていたなんて知らなくて、聞こえて来た「ソ」から始まるCのキイのシンプルなスタンダード曲を弾いていました。
この時もTさんは、途中で音をほとんど変えなかったけれど、全体的にあまり違和感なく聞こえていました。というのも、クラシックなら、隣の鍵盤を一緒に弾くと濁った音としてミスタッチに感じてしまうけれど、Tさんの好きなジャズなら、わざと隣同士の音を同時に弾いて緊張感を持たせたりすることもよくあるからです。それに手元の揺れる力加減かも知れませんが、ファ#とソの二つの音が重なったり、ソの一つの音だけが聞こえたりと、まるで意図的に出してるかのような時もありました。もしそうだとしたら、なんと大きな発見でしょう。Tさんも、音を聴きながら上半身を左右に揺らして、合奏を楽しんでいる様子でした。
その後、リクエストのクリスマス曲を数曲歌ったら、Tさんは疲れが出たのか途中でウトウトしだしました。
すると、お母様がTさんが小さい頃よく聞いていたというクリスマス曲の動画を見せて下さいました。最近Tさんが自分で見つけて、興味深げに観ていた動画だそうです。私は初めて聴く歌でしたが子供らしい可愛らしい曲で、こんな曲も聞くんだなとホッとしました。
さてやっと目が覚めたTさん、今度は鉄琴用の黄色いバチを持って、ブルースにも興味を示してくれました。バチを握り締めて、その先を鍵盤に当てようとしていることがわかりましたが、いくらもしない間に残念ながら時間切れとなりました。
最後にお母様が「音を合わせるのが楽しいんだよね~。楽しかったヒト~?」と聞いたら、Tさんはゆっくり手を上げてくれました。
Tさんの指の動きが、思った以上に進化していて、驚き感動しましたが、もしかしたら私が気が付かなかっただけで、本当はもっといろいろな事が出来ているのかも知れません。反省しつつ、あせらずゆっくり共に楽しみながら進んでいけたらと思います。
