音楽
担当:石橋
■活動の様子
今回は伺ってすぐ、お母様が電話の対応に当たられている間、T君はずっと静かに私に寄りかかってくれていました。必然的に抱っこするようにゆっくりと背中をなでていたせいか気持ちが同調したみたいで、初めからスムーズに音楽に入っていけたようでした。
ピアノに向かって一緒に座り、ゆっくりと「ラブミ―テンダー」を歌い始めました。今度はT君の左手を取ってメロディーを一緒に弾き始めると、嫌がらずにワンコーラスを完奏。すると、思いがけずお母様がT君の右手を取って、同じようにメロディーを弾き始めました。一瞬、お母様に任せた方が良いかなと思いつつ、キリの良い所まで弾いてみようと、そのまま続けてみました。両手で同じメロディをオクターブ違いで、それぞれ別の人の手でリードされながら弾くという初めての状態でしたが、T君は嫌がらずに両手をお母様と私に任せながらジッと音を聴いている様子でした。両手が右方向に動くと、音も高く聞こえることや、高さが違うけど右手と左手は同じメロディーを出していることや、一つ一つの鍵盤を叩いて音を繋ぐことでメロディが出来ることを、もしかしたら体と目と耳で感じていたのかもしれません。何度か繰り返している間も、とても興味を持って音を聴いている様子でした。
次は「ハロードリー」を、お母様に口ずさんでいただきながら、弾いてみました。T君は自分で右手を時々ピアノの上に置いて、ピロッ、ピロッと音を入れてくれます。それが偶然なのかメロディに合っていることがあり、お母様と驚きあいました。すると今度は、電気ピアノの方に行きたがって椅子を降りると、お母様がスイッチを入れて下さいました。もしかして伸びる音を出したいのかなと思ったのですが、自分でスイッチを触っただけで音は出さずに、そのまま床に座ったまま体が止まってしまいました。本当は何をしたかったのかわからないまま、たまたま床に並べてあった太鼓でリズムを作って叩いてみると、珍しくジッと聴いてくれているようです。
初めて打楽器にも反応してくれました。単音ではなく、いくつかの音でリズムを作ると、メロディはないけど音楽が現れて見えてくる感覚でしょうか。打楽器にも興味を持ってくれて喜んでいると、お母様がT君にはお気に入りのドラマーがいるとのこと。なんとスウィング・ジャズのドラム・バトルの動画で、片方の人だけを好んで聴いているとのことでした。ジーン.クルーパという歴史的なドラマーの一人だとか。歌やトランペットだけでなく、ドラムの音の違いも判るのだとしたら、本当に驚きでした。
感心しつつ、太鼓の横にあった鉄琴を爪ではじいて、軽い気持ちで「ラブミ―テンダー」を演奏してみました。するとT君が興味を示してくれたので、お母様が何種類かのバチを出して下さいました。その中からプラステックのバチを持って鉄琴を叩いてみたら、とても硬くて大きな音がしてビックリしました。
「これはチョッと音が激しすぎるかな?」と言ったら、お母様が持っていたバチの中から、T君がバチを選んでくれて、小さいゴムのようなバチで叩くと、なんと爪と同じ柔らかい音がしました。T君は、かなり正確に音を聴き分けていて、素材によって出てくる音が違うことも知っていたのかもしれません。
感動していたら、お母様が「やはり鉄琴よりピアノが聴きたいみたい。」とのことで、再びピアノの前へ並んで座りました。そこで、T君の好きなクリスマス曲を歌ってみると、ピアノの高音の方を自分から手を出して弾き始めました。ゆったりとリズムに合う感じで主旋律も壊さないように、ピロッピロッという感じで音を入れてくれました。
たまたまなのかもしれませんが、今回は本当に驚くばかりの発見の連続で、改めて大きな可能性を感じた次第です。