Friday 27 Sep 2024 HT

音楽

担当:石橋

■活動の様子
数カ月ぶりに合ったTさんは、丁度、学校から帰ったばかりのところでした。まだ玄関で車椅子に乗った状態でしたが、私が声をかけると首を伸ばして私の顔を見ながら、廊下に掛かったカーテンの端を指でヒラヒラとさせて歓迎してくれたようでした。ちゃんと覚えていてくれたようで嬉しかったです。久しぶりに会ったTさんは、また少し大きくなったようでした。
Tさんが着替える間、ピアノをお借りしてラグタイム風の曲を軽く弾いてみました。Tさんが好きなジャンルかなと思ったのですが、残念ながらそれほど反応はなかったようでした。

ところで私がお休みしている間に、有難いことに、わざわざ調律をして下さったそうで、初めは鍵盤が重たかったけれど、弾いているうちにだんだん軽やかに響くようになりました。もしかしたら、最初は遠慮がちに弾いていたから、Tさんは反応しなかったのかなと思ったりしましたが、学校から帰った直後で少しお疲れのようでもありました。

一緒にピアノで連弾が出来ればと、ブルースの曲を歌ってみましたが、お母様にピッタリくっついて、ピアノの椅子にも触ろうとしません。そこで前からの宿題で、Tさんの大好きなサッチモの「Hello,Dolly!」を、お気に入りのアレンジのイントロを加えて、ついでにキイも上げて書き直した譜面で歌ってみました。
印象的な高速6連符始まりのイントロを弾き出すと、「あ、アレだ!」と思ってくれたらしく、歌い始めてからお母様の「ほらほら!」の声で振り向くと、例の上半身フリフリダンスで「楽しいよ~!」と全身で表してくれていました。ヤッタ~!私も嬉しくて、何度も繰り返して歌いました。お母さまもご一緒に歌って下さって、Tさんは、ずっと楽しそうに聴いてくれたようでした。今まで何度かこの曲を弾いていましたが、やっとTさんの思うような「Hello,Dolly!」に近づけて良かったです。

さて次は、Tさんの大好きなクリスマス曲のメドレーを。
「サンタが街にやって来る」では、お母様がTさんに鈴を持たせてくれて、楽しそうに振ってくれました。お馴染みの曲でもアレンジが違うと、気づきにくいこともあるのですが、メロディーがしっかり頭に入っている様子で、すぐに馴染んでくれました。サスガです。

ところで前にお母様が送って下さった動画で、Tさんがカーペットに座ったままピアノの椅子に寄りかかり、おもむろに鍵盤に手を伸ばし連続して違う単音を出した様子を拝見して鳥肌がたったことがありましたが、今回は何度か声掛けしても、ピアノの鍵盤を一度も触ろうとしませんでした。微妙に誘導されるのは嫌らしく、弾きたくなったら自分から弾いてくれるのかもしれません。

Tさんは右手人差し指の第2関節を使って、タブレットの動画を操作しようとすることもあり、その場合は、たいていお母様が画面を立てて見せている時で、お母様がTさんの要望を感知して画面を変えてくれるようです。
Tさんは、ある程度狙いを付けて触れる場所を絞れるようなのですが、立っているタブレットと角度が違うので、水平にあるピアノにそのまま上から手を降ろすと、複数の鍵盤に触れて音が濁ってしまいそうな気がします。改めて、どうやって綺麗な単音を連続して出せたのか、直接見てみたかったのですが、残念でした。
もしかしてTさんが自分で意識して、一つ一つ音の違う鍵盤を丁寧に押していたのだとしたら、簡単なメロディーを弾けるようになるだけでなく、自分で音楽を作り出す可能性は大いにあるかもしれません。
ただ、そうなるには音や鍵盤の最低限の基本的なルールをTさんに理解してほしいところもあり、はたしてTさんはそれを望んでいるのか、期待しつつも、微妙なところがあります。まずはいろんな音を、たくさん楽しんで欲しいと思いました。ひょっとしたら、そんなことはもう知っているのかもしれませんし。