音楽
担当:石橋
■活動の様子
まずは、ゆっくり「ラブミ―テンダー」を歌い出すと、じっくりと興味を持って聴いてくれました。実は前回のようにこの曲を一緒に弾きたかったのですが、いきなりだったせいか、お母様がT君の手を取ろうとしても、なかなか弾こうとはしてくれませんでした。
今度は、やはりT君のお馴染みの「ハロードリー」を弾き始めると、お母様が歌ってくれて、何度か繰り返してみましたが、まだ鍵盤を触るという気にはならないようで、T君はジッと聴いていました。
何か新しい曲を、となり、リズミカルなシャッフルのブルースで「Well, alright,OK!」を初めて弾いてみると、興味を示してくれました。前半が典型的なブルース進行の曲で、弾いていると興味を持ってくれたみたいなので、間奏を繰り返していると、いつの間にかお母様がT君の電気ミニピアノを出して、オルガンやトランペットなど、押すと伸びる音を用意してくれました。するとT君も、お母様に手を取られることもなく、なんと自分一人の右手で、伸びる単音で絡みだしました。それが、なかなか絶妙で、自由な不協和音を受け入れるブルースならではでもありますが、T君は私のピアノの音を聴きながら、自分の意志でオルガンの音を出していたのです。もちろん、まだドレミの位置は理解してはいないかもしれませんが、何より、音楽でコミュニケーションを取ろうとしていたことに違いなく、これは凄いことだと思いました。
だんだんノッて来たみたいようなので、今度はT君もお気に入りだという「サマータイム」を歌ってみました。お母様が次々とミニピアノや電子二胡で絡んで来てくれて、T君も引き続きオルガンの音で参加してくれました。これも、なかなか良い感じで、気分さえ乗れば、T君と音でコミュニケーションが取れることを知りました。
何より、お母様の積極的な参加誘導のおかげかもしれませんが、「その気にさせるのがなかなか大変で。」とのこと、確かに研究の余地ありです。この唄は、サッチモと共演していたビリーホリデーの歌で知ったとのことで、そう話しながら、お母様がタブレットで彼女の代表曲「奇妙な果実」の動画を出したら、T君は食い入るようにジーッと観ていました。
アメリカ南部の人種差別の惨状を淡々と歌う、詞もメロディーもアレンジも重たい曲なのですが、なんと2、3歳の頃に自分で見つけて以来、ずっとビリーホリデーの他の曲も聴いていたそうでした。0歳でサッチモに反応したように、2,3歳でビリーホリデーに釘付けになるなんて、巨人と言われる伝説の演奏者の創造力やメッセージを感じ取る感性があるのかもと改めて驚いた次第です。
この後、大きい方の電気ピアノに、自分でにじり寄って行ったのですが、お母様が電源を入れてくれたのに、今一つ弾こうとはしませんでした。ホワイトクリスマスやジングルベルなどのクリスマスソングを幾つか歌いましたが、今回は全身を揺らしながら踊るという程ではありませんでした。もしかしたらビリーホリデーに集中した後では、ちょっと切り替えが難しいのかもしれません。
最後に、ゆっくりと鉄琴でラブミ―テンダーを叩くと、少し興味を示したようでした。ピアノの鍵盤でも鉄琴でも、叩くところによって音が違う事は理解している様子で、ひとつ叩いては、また少し離れた所を叩くと違う音が出てきて、それらが繋がってメロディーになっていくことを確かめる様に、ジッと見て聴いていました。
また可能性を感じつつ、今回初めて一人でセッションに参加出来たことは何よりの感激でした。