音楽
担当:石橋
■活動の様子
前回の最後に、膝立ちして太鼓(ジャンベ)を叩ける事がわかったので、御家族と相談して、今回は椅子に固定しないで、壁際にあるピアノからは少し離れているけど、カーペットの上に楽に座ってもらい、自由に動けるようにしました。
一応、背中をクッションで安定させて、横にジャンベを置いて好きな時に叩けるようにして、目の前の大きなテーブルに、キーボードと様々な打楽器を並べました。
ウィンドチャイムは、お母様がテーブルの上に固定して下さり、
「まるでパーカッショ二ストみたい。」と。正にそんな感じでした。
私は、少し離れた所にあるアップライトのピアノで、まずはCさんのテーマソングの「A whole new world」を。続いて、その日が忌日だったサトウハチロー作詞の「小さい秋」など秋の歌を3曲。
まだCさんに動きがないようだったので、Cさんの近くに戻って、御家族の方達にもご協力頂いて、打楽器でリズムを作ってみました。
左手にスティックを持ったCさん、テーブルをコツコツ叩いてからスティック捨てようとしたら、そこに、ご家族がウッドブロックを当てにいって音を出すという、今までと同じ形を少し続けたものの、なんだか、音は出てもCさんは興味を示していない様な気がして、どうすれば良いのか考えました。
Cさんは、周りの大人がアレコレ何かを提供する時よりも、むしろ大人達が傍にいない時に、突然自分からヒョイと簡単にやって見せる所があり(前回の太鼓、前々回のキーボード等)周りが思う以上に潜在能力はあるのではないかと考えました。
それを何とか引き出せないかなと思いつつ、Cさんが首を振って何度も頷くようにすることがあるので、C さんの首振りに合わせて、私も一緒に首を振り、そのタイミングでシンプルにキーボードを弾いてみました。
同じ感覚で力強く繰り返し頷くC さんのリズムが、音として少しづつ伝わってきました。
Cさんが首振りを止めると、私の首振りもキーボードも同時に止まり、Cさんが頷き始めると、私の首振りとキーボードも同じタイミングで始めます。
途中から、タイミングだけ合わせて、音を少し変えていきました。
その間、じっとCさんの動きと表情に注目して、「そうそう、わかるよ。なるほどね。そうだよね。」と共鳴するようにしました。
すると一瞬、Cさんが下を向いてニッと笑ってから、横目でチラッとこちらを見てくれました。
Cさんが笑ってくれたのは初めてではなかったかと。
それから、
頷きながら時々、テーブルの上のタンバリンを手でトントントンと軽く叩いたりしてくれるようになりました。
すかさず私も、テーブルの上のエイサー太鼓をトントントンと軽く叩き返し、またすぐ首振りに合わせてキーボードを弾きました。
1拍目と2拍目の首振りと首振りの間に、ギュッと思いが詰まっていて、空白の間にも細かいリズムが規則的に刻まれているのが伝わってきました。
その細かいリズムが、伝えたくても伝えられなかったCさんの思いの様に聞こえてきました。
それに気づいた時、こんなにもエネルギーが詰まっていたのかと驚き、感動しました。
興奮してお母様にお話すると、「そういえば小さい時は、いつもずっと何かを喋っているか歌っている子でした。」との事。
Cさんの頭の中には、感受性と知性による言葉がいっぱい詰まっているのだなと感じました。
暫くCさんにピッタリと音で寄り添った後で、「Superstar」「ケサラ」「5匹のこぶたとチャールストン」他をお聴き頂きました。
今回は、対面でこのセッションをたっぷり続けた事で、Cさんにグンと近づけたような気がします。
Cさんの表情が前より少し柔らかくなった様に感じました。
こちらが、いつもCさんを理解しようとしてることも、Cさんに少しは伝わったかなと。
コミュニケーションの道具でもある音楽を通して、
シンプルに「同調する」「共鳴する」という方法で、互いに理解が深まるという事を改めて知った、貴重な経験でした。
Cさんが感じている事を、Cさん自身が音色やリズムで少しでも具体的に表現できれば良いな思いました。
もしかしたら、すでに表現していたのかも知れませんが、もっと読み取れるようになりたいと思います。
■保護者の声
自ら音を出せるのなら、食事や排泄の要求の合図として、何か特定の楽器で教えてくれることはできないだろうかとのご意見がありました。感情表現ではありませんが、具体的な行動を表す言葉の代わりに楽器を鳴らすという事は、可能かもしれません。探ってみたいと思います。
■次回活動予定
2020年11月27日14:00~