Wednesday 12 April 2023 FKK

音楽

担当:石橋

■活動の様子

 今回は伺う数日前に、なんとKさんが足に火傷を負ったとのことで、それもあってか、ぐっすりとお休み中でした。ヘルパーさんと様子を見つつ、無理をしないでKさんが目を覚ますまでゆっくり待つことにしました。ヘルパーさんの話によると、小さい頃からKさんは我慢強くて、あまり泣いたことがないそうです。そのぶん、痛いところに気が付くのが遅れたりすることもあり、それを心配している様子でした。
 早く良くなると良いですね、と話していたら、Kさんが目を覚ましたようなので、ベッドサイドでKさんの好きな嵐の「Happiness」など、明るめの曲を数曲歌いました。ただ、体調を考えたら、あまり大きな声で歌う気になれず、遠慮して歌っていたら、また眼を閉じてしまいました。
 ヘルパーさんによると、目だけ閉じて起きているかも知れないので、せっかくだから何か歌ってあげて欲しいとのこと。それではと、今度は手持ちの譜面の中から、ヘルパーさんに選んでいただきました。
 「星に願いを」「Over the rainbow」「Smile」「大きなのっぽの古時計」など、しっとりバラード系の曲を数曲聴いていただきました。
 Kさんは、目を閉じたまま時々ニッと笑ったような時もあったものの、今回は「Kさんホイッスル」も持つだけでした。

 ヘルパーさんによると、嬉しいことに、「Kさんホイッスル」を時々持って練習をして下さっていたそうなのですが、毎日2・3回はする歯磨きでも、未だに歯ブラシを噛んだりして上手く磨かせてくれないので、ホイッスルの練習は月に1回だから、扱えるようになるのはかなり難しいのではないか、とのことでした。
 私としては、真摯に取り組んで下さっていることが有難く、Kさんが嫌がらずにずっと握っていてくれることが嬉しかったりするので、そこにKさんが楽しいと思ってくれる時間があれば、まずは十分かなと思っています。

 余談ですが、Kさんの枕元の壁には、お祖母様が、19歳になったKさんに贈ったという、黒墨で書いた和歌の横に朱墨で椿が画かれた半紙が貼ってあり、ヘルパーさんが、ずっと気になっていたそうで、「なんて書いてあるか読めますか?」とのこと。確かに、かなりの達筆で「K、19歳の春」だけは分かるものの、何とか読める漢字が「藤原何某」だけで、次回までに調べてくることを約束しました。そして、藤原清輔朝臣と言う、平安時代後期の歌人が読んだ歌であることが分かりました。
「長らへば またこのごろや しのばれむ 憂いしと見し世ぞ 今は恋しき」
百人一首84番。新古今集より出典。現代語訳は、「もし生き長らえたなら、辛いと思える今の世も、やがて懐かしく思い出されることでしょうか。かつて辛いと思っていた世の中が、今は恋しく思えるのだから」
 お孫さんの成長を喜びつつも、ポジティブなお祖母様の心を思い、早く火傷が直ることを祈りました。