音楽
担当:石橋
■活動の様子
毎回、その日の様子を撮った写真をお母様が送って下さるのですが、実は、前回終わった直後にお母様が送って下さった動画を見てビックリしました。その動画では、T君がピアノの前の床に座っていて、左半身をピアノの椅子に寄りかかったまま、右手を上げてピアノの蓋の上を触っていました。弾きたそうにしていたのでお母様がピアノの蓋を開けてあげると、なんと自分で鍵盤を触りながら、ド、ミ、そして1オクターブ上のミと、一音一音濁ることなく出していたのです。
つまり鍵盤の上に、単音で一つ一つ自分で指を落としていけることを発見!
ピアノの椅子に座った状態では、手のひらが体の外側に向いているので、腕を横に曲げたまま指を真下に降ろすのは難しそうでしたが、床に座った状態で腕を伸ばしたら、ちょうど掌が下に向いて指先が鍵盤の上に降ろしやすいのではないかと思えました。鍵盤の位置を覚えたら、自分でメロディーを弾けるかもしれないと、興奮気味に動画を何度も見ながら、T君が自分の意志でピアノを弾ける可能性を強く感じた次第です。
とはいえ、床に座ったままだと鍵盤の位置を確認できないかもしれないので、ギリギリ白鍵と黒鍵が横からでも見える高さの、厚めのクッションか小さい椅子でもあれば良いだろうか、などとあれこれ考えつつ、今回楽しみにやってきました。
最初はピアノの椅子に横に並んで座り、ラブミ―テンダーをゆっくり聴いてもらいながら、あわよくば鍵盤の位置を確認してもらおうかなと思っていたのですが、なんとも残念なことに、ピアノを一緒に弾くどころか、すぐに椅子から降りてしまいました。低い所から、手を伸ばして鍵盤を弾くことにもチャレンジしたかったのですが、残念ながら、まるで関心がない様子でした。
もしかしたら、こちらがT君にピアノを弾いて欲しくて、焦りすぎていたのかもしれません。前にもお母様が仰っていましたが、誘導しようとすると、それを察してやる気をなくすようでした。
この日は、たまたま少し疲れている様子とのことでしたので、体調のせいもあるかもと、T君の大好きなクリスマスソングを何曲か聴いていただきました。少し楽しんでもらえたようでしたが、T君が突然、何処かへ行こうとしたので驚いたら、「もしかしたら、さっき見ていたアレを見せたいの?」と、T君の気持ちを察したお母様が1冊の本を持ってきてくれました。
それは、いかにも「お気に入り」で使い古した感じの、いわゆる「音が出る絵本」でした。中には子ども用の曲が数曲入っていて、片方のページにある大きなスイッチを押すと、音楽が流れてくる仕掛けの絵本です。
早速スイッチを自分で押して、T君が中の曲を聴かせてくれました。
「イヌのお巡りさん」「アイアイ」「さんぽ」など、どれも耳馴染みのある子ども向けの名曲ばかりで、私も合わせて一緒に歌いました。
中でも、「おつかいありさん」が大好きらしく、目をつぶって上半身をフリフリ揺すって楽しい感情を表してくれました。
お母様によると、赤ちゃんの時に抱っこしてオデコをツンツンしながら「あっちいってチョンチョン こっちきてチョン」と歌うと、とても喜んだとのこと。
今までサッチモ関連のジャズしか聴かないのかと思っていたら、ちゃんと赤ちゃんの頃の幸せな経験と記憶もあることに安心した次第です。T君の大好きなサッチモだって、赤ちゃんの頃はお母さんの子守歌を聴いていたのではないでしょうか。
今回は、この話が聞けただけでも良かったなと思ったら、T君が今度は電気ピアノの前に行って何かを待っている様子なので、お母様が急いで電源を入れると、いきなり自動演奏でショパンの「幻想即興曲」が流れ出しました。すると、これにも上半身をフリフリして「嬉しい楽しいのダンス」を見せてくれました。
そういえば、ショパンもこの曲だけはお気に入りとのことで、本当に幅広い音楽の聴き方を知っているT君に、改めて脱帽した次第です。
次回は、もし興味を持ってくれたら、腕を上に上げるだけでなく、前にも伸ばして、鍵盤を見ながら一つ一つ音を出すことにも挑戦出来たらと思います。