音楽
担当:石橋
■活動内容
T君の準備が出来るまでピアノを弾いていたら、いつの間にかT君が横に座ってくれたので、T君のお気に入りの一つ「ハロードリー」を弾いてみたら興味を示してくれました。メロディーを、T君の手を持って一緒に弾けないかなと思ったのですが、この時はまだ、T君は聴く方が良かったみたいでした。
さて、以前学校で合奏をした時の動画を見せて頂いた時に、T君が鉄琴の上にマレット(バチ)を置いたまま右へ左へと動かしながら音を出しているのを見て、
こういう音の出し方が出来ることを知って、ちょっと感動したことがありました。
この方法は、単音を正確に出せなくても音階を上がったり下がったりしながら、ギターのコードを鳴らすような感覚でリズムを作るのに使えそうな気がしました。
実は、T君の大好きなサッチモの演奏でも、「ラビアンローズ」という曲の中に、鉄琴の上に置いたマレットが転がっていく音に近い音が何度か出てくる部分があり、これなら興味を持って音を出してくれるかなと思いました。ただ、T君がマレットを落とさないように握ることは難しいので、お母様がサポーターを使って手に固定して下さいました。
ちょっと音の進行の似ている「As time goes by」をゆっくりめに歌い、最初は聴いて貰って、好きな所で途中から鉄琴を右へ左へと鳴らしながら入ってきてもらうようにしました。なかなかタイミングが難しかったかもしれませんが、歌っていると、そのうち独特の転がる音階の音が聞こえてきました。
正確に4拍子に合わせて、とっても良い感じでしたので、内心「ヤッタ~!」と思って振り返ったら、なんとお母様が鉄琴を片手で持って前に構えて、もう一方の手でT君の手を取って一緒に鳴らしてくれていました。鉄琴を机の上に水平に置いたままだとT君の腕が動かしにくかったそうで、結局、鉄琴を起こして音が出る面を垂直に立てて、マレットを正面から押し当てながら擦る様に右へ左へと動かしていた様でした。
T君もお母様も楽しそうではありましたが、鉄琴を片手で持ち上げたまま音を出すのは不安定だし、何より疲れるに違いありません。マーチングバンドのシロホンの様に、最初から立てた状態で固定できれば良いのかもしれませんが、これはまた課題になりそうです。ただ、この音の出し方は、悪くはない気がしました。
ところで前回、プレスリーのロカビリー風の曲に興味を示していたT君ですが、今回は新しいお気に入りを見つけたそうでした。あの美しいバラード「Love me tender」を、フランク・シナトラが肩を上げ下げしておどけながらリズムを取り、それをプレスリーが受けて、アップテンポの4ビート(デキシーランドJAZZ風)で歌っている動画です。早速、そのリズムで「Love me tender」を歌ってみると興味を示したようで、また横にお母様と一緒に座ってくれました。
そこで今度こそT君に単音でメロディーを弾いて欲しくてお母さんにお願いしたら、最初の8小節を、T君の手を取ってお母様が一緒に弾いて下さいました。続きの8小節を私が弾きながら歌うと、T君も興味を示したようで、何度も繰り返して一緒に「Love me tender」を演奏できました。知っているメロディーを、「自分が今弾いている」という感覚を持てたら、もっと鍵盤の一つ一つに興味が出てくるかもしれません。
さて、今回もクリスマス曲コーナーでは、まずは「ホワイトクリスマス」を歌い始めると、「ハッ!」と、T君が固まったみたいで、一番興味を示してくれたようでした。続いて、「赤鼻のトナカイ」や「サンタが街にやって来る」など、お気に入りの曲が続くと、上半身を右左へ揺らしながらダンスをしてくれました。やはりクリスマス曲が一番好きな音楽のようでした。
和んだところで、もう一度鍵盤に触れてもらおうとブルースセッションを始めようとしたら、残念ながらお風呂の時間となりました。T君は今の所、どちらかというと自分で音を出すより、音を聴く方が好きみたいな気がしますが、T君が自分で音を出すとしたら、何が一番良いのか、無理なく楽しめる方法が見つけられたらと思います。